110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

大杉栄評論集(飛鳥井雅道編)

 本書は岩波文庫版。

 大杉栄という人は、実際には余り知らなかった。
 本書を読んでその片鱗が伺えた。

 「法律と道徳」という小編がある。
 以下、全編を見てみると・・・
 法律は人を呼んで国民という。道徳は人を指して臣下という。
 法律が軽罪人を罰するのは、わずかに数ヶ月かあるいは数ヶ年に過ぎない。けれども道徳はその上に、更にその人の生涯を呪う。
 法律は着物のことなどに余り頓着しないが、道徳はどうしてもある一定した着物を着させる。
 法律は何かの規定のある税金のほかは認めもせず払わせもしないが、しかし道徳は何でもかでもお構いなしに税を取り立てる。
 法律は随分女を侮蔑しているが、それでもともかく子ども扱いだけはしてくれる。道徳は女を奴隷扱いにする。
 法律は少なくとも直接には、女の知識的発達を礙げはしない。ところが道徳は女を無知でいるように、然らざればそう装うように無理強いする。
 法律は父なし児を認める。道徳は父なし児を生んだ女を排斥し、罵詈し、讒訴する。
 法律は折々圧制をやる。けれども道徳はのべつ幕なしだ。
 時代背景もあるので、今となっては不適切な表現も伺えると思う。
 気づいたことは、ここに現れた「道徳」が現代では退行し、「法律」が優位な世の中になっているのではないかという感覚だ。
 しかし、「法律」が優位という状況も、これはこれで、何かおかしいのだ。