110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

私の個人主義(夏目漱石著)

 本書は講談社学術文庫版で読む。

 ここで表題にある「個人主義」とは、現代の考え方にも近いように思う。

 本書は、著者が行った、5つの講演を元に作成されたのだが、この中で「ロマン主義」と「自然主義」というものを対比させているところがある。
 前者は、例えば江戸時代のような封建社会、そして、武士道のような「理想」を目標に生きることを求められた時代・社会であり、それに対して、明治時代は、自然主義・・・それぞれの個人・個体の差を認めて、「理想は良いけれど、絶対そこにはいけないよね」と、現実的な考えをする時代・社会と考えているようだ。
 すなわち、夏目氏は、とても現代的な視点を持っているのだ。

 その後、大正時代に、個人主義自由主義が、更に台頭したが、昭和になり、また、理想主義、ロマン主義の風潮が現れ、第二次大戦後は、ご存知の通り・・・現代に至るわけだ。
 しかし、本書での個人主義は、少し異なる、例えば、個人を認めることは、他の個人も認めることだとし、更に、道徳や倫理観は、これを認めるというのだ。

 うがった見方をすると、この道徳・倫理というのは意外と曲者で、ある種の権力や理想(理念)の表象でもあるのだ。

 本書はとても好きな本なのだが、敢えて言うと「そこ」が気になるのだ。