110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

小川未明童話集(小川未明著)

 本書は新潮文庫版で読む。

 童話は必ずしも子供のものではない、大人も読んでよいものだと思う。
 そして、本書を読むと童話にして、こんなに難しい世界があるのかと思ってしまう。

 作品の終わり方が、勧善懲悪・・・水戸黄門のようにわかりやすくなく、たとえ幸福な終わり方にせよ、何か暗い影のようなものが漂うような作品が多い。
 解説を読むと、著者の描写の美しさを取り上げていたが、それもさることながら、この著者の作品を読んだ子供も大人も、何やら考えざるを得ない状況に陥るのではないのか?

 子供を見失って探している母アザラシは、風や月に、わが子の行方を捜して欲しいとお願いする。
 月は、方々探したが見つからないので、母親の寂しさを紛らすために、太鼓をあてがってやる。
 しばらくたって、月がそのあたりを通ると、アザラシの母親が鳴らしている太鼓の音が聞こえてきた。
 どうも母アザラシの気に入ったようだ。
 ・・・・という作品があるのだが、子供が見つからない寂しさと太鼓の組み合わせがどうもしっくりこない、単純に、太鼓を叩いて気が晴れたというのなら、子供が見つからないこととは、その程度のことのように見えてしまう。
 それならば、未だ寂しい気持ちを持ちながら、太鼓を叩くということなのか?
 そうすると、そこには宗教や儀式というものが見え隠れしているように思うのだが・・・まぁ考えすぎかな?

 だから本作は、作品が書かれたときの、社会や文化などを考えなければ、その内容が真には理解できないのではないかと思うのだ。

 そう、本作は童話とは単純にくくれない作品群であるのだ。