110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ちいさこべ(山本周五郎著)

 本書は新潮文庫版で読む。

 ある書店でマンガの中にこの題名があったので取り上げてみるとやはり原作は山本周五郎であった。
 買おうかとも思ったがまずは文章から入ろうと思いその時は買わなかった。
 実際読んでみると小編ではありながら感動的な作品であった。
 だから、こういう優れた原作をマンガ化するという取り組みは評価したいと思う。
 ただし、いつぞや流行った日本の古典的名作のマンガ化のように営業的に成功するかというと、いささか危ういものを感じる。

 小説をマンガ化にするということは、原作の文章を削りそれを絵で置き換える作業である。
 それは緻密に組まれた構造物を崩さないように、隙間をつくっていく作業であると思うのだ。
 そのとき、そのマンがと原作の関係はどういうものになるのだろうか?
 優れた文章で構築されていればいるほど、マンガ化により原作の要素を多く失ってしまうのではないだろうか?
 作品のアウトラインだけを追いかけたり、文章ではイメージを思い浮かべにくい人に、無理やりイメージを与えるということはできるのであろうが、それは、本質的なものなのだろうか?

 だから、マンガの方はもう少し感動が癒えてから読んでみたいと思うのだ。
 なにしろ、山本周五郎という人の世界=イデアの信者になってしまったから、その経典の亜流を認められないのではないかと危惧しているのだ。