110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

異色官僚(佐橋滋著)

 本書は1967年ダイタモンド社から刊行のもの、その後、1987年徳間文庫から、そして私は1994年刊行の社会思想社、現代教養文庫版で読む。

 城山三郎氏の「官僚たちの夏」が少し前にドラマ化されて珍しいなと思っていたが、そのモデルがこの著者である佐橋氏である。
 私の先入観としては「特振法」の時代に、著者は自動車産業の統合を図り、もし可決していれば、当時2輪(オートバイ)専業だった(現)ホンダが4輪業界への参入を国策で阻まれるという事態があったということで、その旗振り役の著者をなんとなく毛嫌いしていた。
 まぁ、本田宗一郎贔屓であったわけだ。
 だから、本書が108円棚にあったときに2,3回棚に戻した、最後は、安いからということで買ったわけだ。
 当初、期待はしていなかったわけだ。

 しかし、予想に反して本書は面白かった、まさに表題のごとく異色官僚である、日本の高度成長の要因の一つに優秀な官僚達が存在したことを数え上げても良いように思う。
 そして、特振法は、成長してきた民間と官僚と間の関係(ステージ)が変化したことの一つの象徴であったのかもしれない。

 現在、佐橋氏のような官僚が居ればと思う一方、社会、経済制度が変わった現在、活躍の場があるのかという疑惑もある。
 しかし、本書の中で佐橋氏の下にある通産省はなんとのびのびと仕事ができたのであろう?
 民間の業者でも規則にがんじがらめな現在、一つの理想郷があったとして本書を読まれてはいかがだろうか?
 はたと気づくと、本書がノンフィクションであることに気づき、現在の漠然とした閉塞感と比べて、愕然とするかもしれないけれども。
 
 最初、解説の佐高信が書いたと思ったら、本人が書いている。
 しかも結構きわどい場面もある、そこもまた面白く異色だ。
 ある時の会合で、興奮するタイプの官僚が灰皿を持って立ち上がった、それに応じて自分も立ち上がるという下りには思わず笑ってしまった。

 また、古い本だとあなどるなかれ、人物の見方、仕事のさせ方には興味深い教訓がある。
 残念ながら、現在のような契約主体で考えている人には難しかろうが・・・・