110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

イスラーム哲学の原像(井筒俊彦著)

 本書は、岩波新書1980年が初版のもの、私は、2013年アンコール復刊されたものを読む。

 以前、価値がわからないままこの著者の本を結構読んでいた。
 読みやすい本が多かったからだと思うが、ある面、イスラームということをなめていたところも正直言うとあった。
 しかし、最近になって、このイスラーム社会が意外と奥深いものだということがわかってきた。
 本著者は、そういうイスラーム哲学の研究者の草分けといえるだろう。
 現在では、本著者よりも詳細な研究ももちろんあるだろうが、日本人が著し、そして比較的手軽に入手できる著作集というと、氏のものになってしまうのではなかろうか?

 ちなみに、今世紀末にはイスラム教の信者数がキリスト教を抜くなどという予想もあり、そういう面からも注目せざるを得ない事項の一つではないかと思うのだ。

 本書では、広範なイスラーム哲学から「存在一性論」を中心に平易に説明している。
 読んでいる時に、ふと「数直線」のことを考えていた。
 「存在一性論」とあるように、存在についての思考なのだが、その形而上な根本には(絶対の)無があるというのだ。
 そして、数直線上にも私たちの誰もが知っていて、とても特異な点がある・・・「原点(0)」だ。
 この原点だけが「無」なのだ。
 そこからほんの少しでもずれるといかに小さくとも「在る」のだ。
 しかも、原点が無いと、数直線は意味がなくなるのだ。

 無が有のための大きな要素になるということ、まぁ多分に幼稚な比喩だが、そんな理屈を頭に描いていた。
 しかし、文章だと自然に流れてしまうが、無と有をくっつけるということは、簡単ではないと思われる。
 でもね、現実の世界では、無から有が生まれていることも事実だ。
 そう、素粒子のレベルでは、何も無いところから粒子が生まれ、また粒子が消えているのだ。
 理屈を考えるよりも現実の方が進んでいるのかもしれないね。
 最近お騒がせな、核分裂核融合なども、ある意味物質が消失しているわけだから、そう珍しい事象ではないのかもしれないね。