110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人びとのかたち(塩野七生著)

 最近、塩野さんの著作ばかり読んでいる、それは「ローマ人の物語」を、たまたま読み始めてからだ。
 実は、当初、塩野さんは「男性」だと思っていた(失礼しました)。
 それは、その文体が非常に「きびきび」していて余り余計な装飾が無い事による。
 その後、いろいろ読んでいくうちに「マキアヴェッリ」や「セネカ」を読む事になった。
 哲学は以前から一度いろいろ読もうとしていたが、最近は「プラトン」など「古典」を読んでみたいと思うようになってきた。
 そういう意味で非常に良い「ご縁」であったと思う。

 さて、本作は塩野さんの今まで見た映画を題材にしたエッセー(そういえば「モンテーニュ」も埃をかぶっている)で、普段映画を見ない私にとっては「はずれ」かと思ったが、意外と面白く読み薦められた。
 興味深かったのは「映像の限界」という章で、どちらかと言うと「文章派(活字派?)」の私にとって、「映像」と「文章」の表現における「差」を示してくれた事。
 それは、「書物は映画ほど多くの人々から受け入れられないのは、当然ではないだろうか。なにしろ、大衆庶民は余り関心をもたない思考の描写にこそ、卓越した力を発揮できるのだから。」という文章に書かれている。
 という事は、最近の「活字離れ」は「思考」にウェイトがおかれなくなっていることによるものなのだろうか?
 「この世のものとも思えぬ美女」を「画像」で再現されるよりも「文書」で書かれた方が想像力が刺激されるのは、既に「旧人類」である証拠かもしれない。
 それも、時代の流れではある。