110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ミシェル城館の人(堀田善衛著)

 本書は集英社版(3冊それぞれ1991,1992,1994)で読む、現在は集英社文庫版があるのでそちらの方が場所をとらないで読めるはず、老眼の私には大きくとも重くとも通常版で結構であった。
 このミシェルとは世に名高いモンテーニュのことしかしその名著「エセー」は知っていてさらに買っていても読了とまではなかなかいかない人の代表である私も本書は楽しく読める、そして改めて時間が掛かっても「エセー(随想録)を読んでみたいと思うようになる。

 ミシェルは時代を先取りしたルネッサンス人である、思想家としては同時期にパスカルがいて好対照になる、私もこの2者を比べるとパスカルの方が思想が深いのではないかと思っていたのだが、本書を読むとそれは大きな間違いであることに気づく、そもそもこの2人に優劣はつけられないだろうし、敢えて白黒つけてもそれは無意味だ、特にモンテーニュについては彼の著作に書かなかったことすなわち彼自身の仕事として行ってきたことが思想にとっての重要な背景になっている、それを知れば生半可な理想や形而上学的なことについて批判する姿勢も見えてくるだろう。
 パスカルモンテーニュを批判したが、モンテーニュの生き方を知れば、その著作は隠居した知識人の道楽では決してないことに気づくことだろう。
 著者は、モンテーニュキリスト教国であり自身カトリックでありながらも決して神を認めず理性に従ったことから、安易に現人神を創り出し戦争へと導いたわが国の考え方(思想の展開)に問題の根があると考えているようだ、そしてそれが現在においても潜伏しているという暗示なのであろうか?
 
 日本人としてモンテーニュをとりあげその原典をひもときながらこれだけの作品に仕上げたその労力に感謝しよう。