110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

構造主義科学論の冒険(池田清彦著)

 本書は1990年毎日新聞社刊行のもの、現在は講談社学術文庫で読める。

 題名の通り、本書は構造主義、それも、丸山圭三郎氏の「ソシュールの思想」という著作に影響を受けていると冒頭にあるように、科学と宗教の考え方の違いから始まり、科学とはどういうものかを、構造主義の立場から説明していく。
 科学的なというと、非常に客観的、論理的なものというイメージを持つが、ここでは、ソシュールの言語論のように、恣意的な関係性を表しているに過ぎないとする。
 確かに、それぞれの事象についての関係性を表す法則や原理はあるが、何故そうなるのかという根本、思想的な言葉で言うと「(基本的)存在論」となると、あまりお目にかかれない(皆無かもしれない)。
 それは、自然科学と思想(哲学)というジャンルの違いもあるが、根本的には、言葉で表す以上、その言葉(言語)自体の持つ、制限、すなわち曖昧性に左右されることなのかもしれない。
 私は、興味は自然科学にあるが、数学を介在する所で挫折したので、いつまでも、抽象論でしかとらえられないものと思うが、なんとなく言いたいことは理解できた。
 しかし、そこまで言いきると、20世紀初頭の命題「ニヒリズム」との折り合いをどうするのかという疑問も持ち上がる。
 
 さて、本書の最終章は、そういう科学論とは別の日本という国の評論であった、これは興味深く読ませてもらった(ラディカルな語り口だが・・・)。
 1990年という時代と2008年との時代の、時間(時代)の差を考えると、もちろん、間単に結論は出ない問題であるが、何か根本としては共通性があるように思えた。