110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

私の中の日本軍(山本七平著)

 本書は1975年文藝春秋社刊行のもの、私は、1983年第1刷の文春文庫版を読む。
 山本氏の著作はいままでにも何回も取り上げてきた。
 本書については、その題名から日本軍、軍隊論だと思っていた。
 ところが、確かに、山本氏の実体験から生まれた、日本軍の分析なのだが、その内容がとてもすばらしい。
 ここには、極限状態の中でしかつかめない、人間観が書き込まれている。
 それは、独善的になることなく、客観的に書き込まれているのだ。
 そして、本書の骨組みになっているのは、ある報道記事により、(軍事)裁判にかけられ死刑になった者の冤罪である。
 
 この本を読んでいるとき、書かれている内容は確かに、第二次世界大戦の陸軍のフィリピンでの戦闘なのだが、私には、「自分の五感を総動員して現実を把握しなさい」ということを(山本氏が)語っているように思えてならない。

 ここには、自分や他人の行動が、語った言葉が、社会状況によって曲げられ、思うようにならない事象が引き起こされる事例が何度も出てくる。
 そして、ここには端的に、その事(戦争)に直接参加している者と、外から眺めているものとの2者が分けられ、その外にいて隠れている者(・・・・隠れているが、力だけは行使する者)が存在することを示唆する。
 そのような、無責任な外部の者が、無責任で悲惨な事件を引き起こすのだ。

 そう、また総選挙が行われるだろう、現在の状況は、表向きは平和そのものであるが、その裏面はどうなのであろうか?
 そのときに、私たちは、何の情報を持って、投票をするのだろうか?
 それが、既に加工された情報ならば、もしかすると、そこには「虚偽」が隠されているかもしれない。
 それは、どうすれば判別できるのだろうか?
 そのような事を考えている人は、読むと得るところがあるかもしれない。
 (そう、無責任な者に政治を任せてはいけないのだ)