110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

写真小史(ヴァルター・ベンヤミン著)

 本書は、ちくま学芸文庫版で読む。
 著者の表題作の他、その中で紹介された、ブロースフェルト、アジェ、ザンダーの写真集について、著者が著した序文も翻訳されている。
 そして、可能な限り、そこで言及された写真が掲載されているのが嬉しい。

 だから、本書は、本文を読み、写真を眺めるという繰り返しになるのだ。

 つい先だって、コダック社がコダクロームというカラーフィルムの製造中止を発表し、写真はデジタルデータという領域に(既に)突入したわけだ。

 ちょうど20世紀初頭のこれらモノクロの写真を見ると、何故か不思議な感慨にとらわれる。
 たぶん、現在の技術のほうが、より優れているのだろうが・・・・?

 それは、私の回顧主義というフィルターのなせる技なのだろう。

 特に、アジェの写真が、心に残るのだ。
 殆どの写真がパリの光景なのだが、その中に人物が移っていないのだ。
 どことなく、孤独な空間・・・それは、人が居ることで減殺される「何か」、それが無いことによる「場」なのだろうか?
 やはり、自分の中の孤独を投影しているに過ぎないのかもしれない。

 そんな中、ECMレコード在籍中のパットメセニー(GROUP)を聞きながら、そのジャケットに見入っていた時代(時)を思い出すのだ(やはり、LPのジャケットの方が良いのだ・・・大きいのでね)。