110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

西洋哲学史(今道友信著)

 本書は講談社学術文庫版。

 本書は良い本だと途中まで読んで感じたので、奥付を見ると2004年で28刷とある。
 私の感覚よりも、本書をここまで支持した人々の方の鑑識眼の方が確かなようだ。

 本書は、著者が行った西洋哲学史の講義を録音し、それを本の形式にしたもの。
 だから、ご他聞に漏れず、最後の近代・現代の部分は駆け足になってしまっているので、基礎知識がないと読み解くのは相当難しいのだ。
 そう、私は後半は残念ながら読み流したのだが、前半の古代、中世、近世の部分はとても面白く興味深く読むことができる。
 本書の前書きに著者自体が記した、本書の性格が記してあるのだが、それに関連しているのか、「民主政治(デモクラシー)は正しいが、民主主義(デモクラティズム)は誤りである」という主張や、大学の制度について「(現在の)大学はスコラであって、ウニヴェルジタスではない」と指摘しているところなどは、著者の主張が見え隠れする部分だ。
 それは、確かに重要な事件が発生したとき、その時の判断をどうするかという事に関係してくるだろう。

 ・専門家としての能力に判断を任せるべきか?
 ・多人数の意見がまとまる選択肢を取り上げるべきか(多数決)?
 この選択肢は、そもそも、発生した問題の質的な要素に左右されることだが、
 例えば、本来、専門性が必要なことまで、素人の判断が入り込んではしないだろうか?・・・という危惧や、専門性という隠れ蓑に包まれてはいるが、その専門的能力の欠けている人が混じっていないか?・・・などという、本質的な前提条件が崩れると、問題自体の解決がおぼつかなくなるということになる。

 なかなか、難しいな。