110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ここに本当の空を(小台三四郎著)

 本書は、1966年九州文学社刊行のもの。
 地方劇団「青鞜座」を主催した著者の、その遍歴を著したもの。
 度重なる運営資金の持ち逃げや、団員の脱退などにもめげずに、着々と地歩を築くその姿は感動的である。
 本書を読んでいて、少し、対場は違えども「人形劇にいのち捧げて(土方浩平著、講談社学術文庫)」を思い出していた。
 当時よりも現在の方が殺伐としているので、このように(地方劇団を支えるような)後援者はなかなか得難い様にも思う。

 そして、この著者の人間力が劇団を守った大きな要素であることは間違いないが、この書で描かれた世界も古き良き時代であったのではなかろうかと思うのだ、もちろん賛否もあろうが・・・

 本書の題名は、劇団で上演した「智恵子抄」から、高村知恵子の「東京にはほんとうの空がない。私はほんとうの空がみたい」という言葉にちなみ、著者が「私もここに、この地に、ほんとうの空をみたいと思ったのである」という、結句による・・・様々な解釈ができる言葉だが、それぞれ感慨深いと思う。