110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

老いる準備(上野千鶴子著)

 本書は学陽書房2005年刊行のもの、私は2008年初版の朝日文庫版で読む。

 介護にまつわる著者の見解が伺える。
 家族、それも嫁や娘など家族内の女性に偏重した介護から他者による介護を提唱する。
 そのためにじゃ金銭による報酬をベースにいかに事業体を継続するかという観点から「市民事業」という提案をしている。
 全体的にきちんとした調査のもとに論述しておりとても参考になった。

 ただし、私としては家族による介護を捨てる気はない、本書が刊行されてから10年ほど経つが「市民事業」という言葉は私の地域では聞こえない。
 そうすると民間の事業者の取り組みの問題になるが、やはり相対的に安い給与水準では将来性が危ぶまれる。
 財政的にはどんどん苦しくなり、事業としての介護は中途半端になっていくだろう、だから家族が面倒をみるしかないように思うのだ。
 将来的に家族のいない者(私=独身者)や、家族制度を否定してきた者は、経済的に裕福であれば、介護を金で買えばよい、それでなければ野垂れ死にの覚悟を決めよう。
 たぶん、理性的な人はこの考えかかたを嫌悪するだろう、しかし、人間の歴史の大部分はこのようなものであったのだ。
 人間は未だそれほど利口ではない。