110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

サン=テグジュペリの言葉(山崎康一郎訳編)

 本書は彌生書房1973年刊行のもの、私は1990年(新装版)で読む。

 「星の王子様」を読まれた方は多いだろう。
 でもその他にも素敵な作品は多くその中から抜粋された珠玉といってよい断章を綴ったもの。
 一つ抜粋しよう。
不十分な言語だけが人間をたがいに対立させる。なぜなら、人間たちがねがっているものはけっして別々なものではないからである。わたしはいままで、無秩序や、下劣さや、破滅をねがっている人間に出会ったためしはない。彼らを苦悩させ、かつ彼らが築きあげようと欲している表象は、道筋にすぎない。ある者は、自由が人間の開花を可能ならしめると信じている。またある者は、拘束が偉大な人間を鍛えあげると信じている。ところがこの両者とも、人間の偉大さをねがっているのだ。ある者は、慈悲が人間をたがいに結び合わせると信じている。またある者は、潰瘍への敬意を建設するように強制する。ところがこの両者とも、愛のために努力しているのだ。ある者は、重荷から解放された人間は、おのれの心情と、魂と、知性とを陶冶する時間を見出しうるがゆえに、繁栄こそいっさいの問題を支配すると信じている。これに反してある者は、人間の心情、知性、魂の質は、けっして、彼らに供せられる食糧にも、彼らに与えられる閑暇にも、彼らから求められる天分にも、すべて関係がないと考えている。そして彼は、神の要求より生まれ、贖いとして引き渡される寺院のみが美しいと信じている。ところが、この両者はともに、魂と、知性と、心情を美化しようとのぞんでいるのだ。そして両者とも正しい。・・・さて彼らは、効力を失った言葉のゆえに、同じ愛の名において武器をとっている。かつそれは、やむにやまれぬ方向をめざす、探求と、闘争と、矛盾した運動であるところの戦いなのである。(城砦)

 宗教やイデオロギー上の争いは今も解消されていない。
 サン=テグジュペリが行方不明になってから70年以上経っていというのに・・・
 それは彼が指摘した「不十分な言語」の問題ではなかろうか?
 改めて本書でいくつかの断章を読むと古いから使えないとは軽々に言えないことに気づく。