110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

保守とは何か(福田恆存著)

 本書は文春文藝ライブラリー中の一冊。

 本書を知りたければ、あとがきを読むべきだ、編集をした浜崎洋介氏が優れた解説をしている、1978年生まれの浜崎氏がこの著者に行き着くというのはなんとも感慨深いことだと思った。
 時間のない人はそだけでも良い、ただし、出版社などの利益にはならないので、ここは一つ読んで見るのも楽しい。

:大衆社会の出現と共に何かが失はれたのではない。初めに大事な何かが失はれた、その弱点が大衆社会の出現と共にはっきりして来たという事に過ぎまい。大衆社会そのものが空虚なのではなく、文化を失った大衆社会が空虚なのである。文化の無い社会は大衆社会であろうがなかろうが空虚であることに変わりがない。が、今日のそれは経済的繁栄と政治理念の喪失から生じたのではなく、明治以来、徐々に行われて来た伝統文化の破壊から生じたのである。それを救はうとして、抽象的な生き甲斐や価値観を模索しても徒労であろう。

 牽強付会という人もいるだろうが、今もこの呪縛を逃れてはいないように思う。
 頭の良い人はこの文章は「文化」という名の形而上学にすぎないのではないのか、と揶揄するかもしれない。
 でも、ぴたりとはまりすぎている。
 しかも、今は政府が「抽象的な生き甲斐や価値観」を創り出そうとしているようにも見える。
 ちなみに、引用した中の「今日のそれは経済的繁栄と政治理念の喪失」のくだりは、当時は、「経済的繁栄」と「政治理念の喪失」だったようだが、現在は、「経済的繁栄と政治理念」の喪失とするのが良さそうだ。
 深化(悪化)しているわけだ。