110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

イリアス(ホメロス著)

 こういう名作はもっと前に読んでおけば良かった。
 これは、すでに読まれた方は頷かれる事でしょう。
 「ギリシャ古代の叙事詩など面白いわけが無い」という先入観がありました。
 ただ、「ローマ人の物語」を読み始めてから、「一度は読んでみるか」のリストには載せていたのです。

 ところが、読み始めてみると、冒頭の第一歌や第二歌は「どこそこの息子」の「だれそれ」が「どうこう」という文体が煩わしく思えたのですが、その後は一気に読み進みました。
 時代を越えて残るものは本物という事を思いました。
 文章が(あくまで翻訳です、しかも素人目ですが)美しいと感じたのは初めてでは無いでしょうか。
 長い年月をかけて研ぎ澄ました文章。
 そして、以前何かの本で読みましたが、当時は、言葉数が少なく、感情表現などを文章で表せないという事情があるにも拘らず、すばらしい表現。

 さて、本の内容とは関連しないが、チェックした言葉は、
 ディオメデスの
 「・・・・。しかし誰かもう一人一緒に行ってくれれば、一層心丈夫でもあるし、勇気も増すであろう。二人で行けば、有効な策をどちらかが先に思いつく。しかし一人の場合は、よしや思いつくとしても、どうしても考える幅が狭く、その案も弱いものになる。」

 アキレウス
 「・・・・それにまた怒りも。怒りと言うものは、分別ある人をも煽って猛り狂わせ、また咽喉にとろけ込む蜜よりもはるかに甘く、人の胸内に煙のごとく湧き立ってくる。」
 
 アイネイアス
 「・・・・。人間の舌というものは滑らかで、その舌に乗る言葉は数も種類も多く、その拡がりは四方に向かって広大な範囲にわたる。相手に向かって何かいえば、こちらも同じ事を聞かねばならぬ。・・・その言い分に尤もなことも少なくないが、そうでないものもある、・・・」
 このようなところです。