110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人はなぜ集団になると怠けるのか(釘原直樹著)

本書は中公新書2013年初版のもの。

現在のコロナ禍で、非常事態宣言を出したり、逆に一連のGoToキャンペーンなど経済促進政策を打ち出したり、結論的には、何をやっているのかよくわからない状況に陥っているのだが、年明けの新規感染者数の大幅な増加から、国民の感染対策に関する「緩み」が指摘されたりしている。

また、以前より、感染対策に懐疑的な意見も多々見受けられている。

こういうことを、ある程度説明できるような、学問はあるのかと思っていたが、どうも本書の範疇である「社会心理学」が、うまく当てはまるのではないかと思うようになった。

そして、本書の取り上げる主な内容とはは、集団になると、手抜きをする人が出てくるというものだ。

例えば、お祭りで、何人かで神輿を担ぐとする、そうすると、その中には、一生懸命担ごうとするする人がいる反面、担いでいる振りをして楽をしようとする人もでてくるというもので、これを「社会的手抜き」という。

これを今の状況に当てはめてみると、コロナ禍で非常事態宣言がでているのから、一生懸命自粛し感染対策を徹底する人がいる反面、他の人がやっているだろうから、私はいい加減でいいや、という人が出てくるということになる。

これは、困ったことでもある、いや、自問自答すると、自分にもそういうところがあるのがわかる、たまたま、家に高齢者がいるので、ウィルスを持ち込むと悲惨な状況になりそうだということで、自粛派でいられるのだが、また、違った状況ならば、例えば、もっと若くて、どちらかというと、貯金もなくて生活が厳しければ、違う行動にでるかもしれない、ただし、本書によると、そういう切実性がなくても、手抜きをする可能性は潜んでいるようなのだ。

さらに、困ったことは、コロナウィルスは、人間の状況にはお構いなしということが、面倒なところだね、一説によると、コロナウィルスも媒介者である人間が全滅すると、生きていけないので、生存のために弱毒化したりするようだが、人間の都合で、例えば、クリスマスや年末年始は、ちょっと、勘弁してもらえないかな・・・なんていうことは聞いてくれないわけだ。

コロナ対策をどうすればよいのかは、本書には出てこないが、なるべく、皆が同じ方向性を持って事にあたるにはどうすればよいか、ということは、伺うことができる。

政府内にも、こういう社会心理学的見地からのブレインはたぶんいると思う、コロナ禍の対応は、複雑に絡み合った問題であり、1年以上未解決で継続中の問題であり、さらには、棚上げにすることもできないという、非常に面倒な問題とも言える。

逆に言えば、本来の国や政府の力が伺える有意義な事象とも言える、苦しい面もあるのだが、今までにない、実践的な経験をする良い機会でもあると言えよう。

そんな中、本書は、一つの視点を与えてくれるものだと思う。

今まで、本書のような社会心理学というものを知らなかったから、見過ごしてきたのかもしれないのだが、こういう「社会的手抜き」の見地からの記事というのはあっても良いのではなかろうか?

非常事態宣言後も、夜遅くまで会食してしまうような輩(政治家など)が出るのは、「社会的手抜き」だからではないのか・・・なんてね?