110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ヴァン・ゴッホ(アントナン・アルトー著)

 最近、自分の精神的な「境界」に近づいた上で読書をしているような気がする、少し、危ないな・・・。

 本書のメインである「ヴァン・ゴッホ」の序文にはこうある。
 人びとは、ヴァン・ゴッホが精神的に健康だったという事が出来る。彼は、その生涯を通じて、片方の手を焼いただけだし、それ以外としては、或るとき、おのれの左の耳を切りとったにすぎないのだ、・・・

そして、
 もっとも、彼は、この自我に到りつけないのではないかという不安から、狂気の発作に襲われて自殺したわけではない。
 それどころか、彼は、その自我に至りつき、自分がいかなる存在であり、何者であるかを見出したばかりだった。そしてそのときに、社会の一般的な意識が、彼が、社会から離れ去ったことへの罰として、
 彼を自殺させたのである。

 人間の感覚はそれぞれ異なるものである、その中で、いわゆる社会に不適応なある範囲のものを規定して精神病というレッテルを貼る。
 アルトーも、そういうレッテルを貼られたもの、すなわち、より共感できる立場から、ゴッホの死を分析する。
 
 この場合の「社会一般の意識」とはなんだろうか?
 ひどく残酷なものだというイメージがあるが、それが、いわゆる(私も含む)普通の人たちの生活圏なのではないかということだ。