110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

橋の上の「殺意」(鎌田慧著)

 本書は平凡社2009年刊行のもの、私は2013年初版の講談社文庫版で読む。

 本書は2006年の畠山鈴香による二人の児童殺人事件の裁判を追いかけるルポルタージュ
 私は、ここで裁判の帰結よりも、畠山鈴香と言う人の精神状況が気になった。
 精神鑑定をした医師は、彼女の責任能力を肯定したが、私見では錯乱した状況での犯行や、自分の娘死因は過失性を帯びたもので事故である可能性も否定できないと思った。
 しかし、裁判は結審したのだから、彼女は無期懲役という刑の執行を受け続けることとなるのだ。

 さて、本書を読んでいてふと思い出したのが、数日前にTVで84歳(だったと思う)の男性が万引きをして、捕まったところを放送していたところだ。
 殺人事件と万引きでは天と地ほども違うことだと思われるだろうが、実は、この万引きの犯人の受け答えを見ていてこの人は「認知症」ではないかと思ったことによるのだ。
 私の父親が、いろいろと家人に(違法ではないが)迷惑を掛けてもまったくケロリとした顔をしていたのとすごく似ていたのだ。
 すなわち、精神性の破綻は意外に身近にあることであり、それが致命的な犯罪に結びつかなかっただけだという認識が必要ではないかと思うのだ。
 私は、畠山鈴香心神耗弱だったと思う。
 精神の破綻は本人の気質だけではなく、社会という周辺要素の影響も大きいのだ。
 それを忘れると、極端な判決を擁護してしまうことも起こりうるだろう。