110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

折りたく柴の記(新井白石著)

 新井白石は、国際人だという事を何かのテレビで見た記憶がある。
 その時、代表作「折りたく柴の記」は読んでみたいと思った。
 しかし、岩波文庫などで探すと、原文と現代語訳が交互に出てくる本の体裁で、私にとっては、同じ日本人でありながら読みにくい本として敬遠してしまっていた(恥ずかしい話だ)。
 ところが、古本屋で「日本の名著(中央公論社)」の「新井白石」の巻があったので見ると、全て「現代語訳」してあるし、その訳者は桑原武夫氏ではないですか、これは「しめた」と思って読んでいる。
 同じ、日本の著作を、翻訳で読むと言うのも奇異な感じだが、それは、自分に対して、古い文化を忘れていると言う事の戒めとして捉えたいと思う。

 さて、冒頭の新井白石は国際人である。は本当だと思う。
 当時、鎖国の時代にあって、当然ながら、海外には出られないものの、中国、朝鮮、オランダ、ローマ・・・の人々とは交流を持ち、それぞれの言語についても研究していた。
 また、白石の創った「詩」は中国、朝鮮まで伝わったという。
 その時代的な背景を考えれば、これは大変なことだと思う。

 この本は、六代将軍家宣、七代将軍家継のブレーンとして貢献した、白石が引退後、回想しながら著した自叙伝である。
 江戸時代も、五代将軍綱吉の時代を通して、平和に酔って腐敗してきた。
 その幕府内の秩序を回復するため、例えば、萩原重秀を糾弾し、彼により品質の劣化させられた、金貨、銀貨の改貨を進言したり(財政改革)。権威の落ちた林大学頭の様々な「デモンストレーション」を戒めたりしている。
 そういう面で見ると、当時は、相当な数の「敵」がいた事だと思う。

 残念ながら、八代将軍綱吉には採用されない。
 しかし、これだけの博学の人物も過去に存在したという事は驚きだと思う。
 それは、彼が、木下順庵と出会うまで「独学」であったという事に因るものかもしれない。
 
 新井白石の墓は、私の散歩コースである(中野区)高徳寺(早稲田通り沿い)なのもご縁だろうか?