110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

(日本人)(橘玲著)

「かっこにほんじん」という書名で、2012年幻冬舎から刊行されたもの。

日本人はずっと前(万葉の古)から、極端な世俗性(現世利益中心主義)だというもの、そして「世界価値観調査」で示された、日本人の特徴とは

①国のためにたたかう気がなく、②日本人としての誇りがなく、③権力や権威を嫌う、というものだった。

私も、日本人と言うものに、もう少し甲斐性があるのかと思ったのだが、余り深く考えなくても、今のコロナ禍の日本で現実に起きていることが全てだ。

例えば、現在の非常事態宣言では、どうも、若者だけではなく、高齢者もあまり、自粛しない人もいるようだ、それは何故かと言えば、古くから伝わる「極端な世俗性」言葉を変えれば「個人主義」のなせる業だ。

前回の非常事態宣言は、その内容が良く分からなかったし、これほど長期化するとは予想もしなかっただろう、そして、少し自粛したら、あれよあれよという間に、感染者数が減ってきた、これは、やる気が多少出るよね、自粛しない人も結構いたかもしれないけれども、結果オーライだ、だから、日本人は国民がきちんと政府の意向に従うんだという、幻想が生まれたんだろうね。

でも、今の状況を見ると、明らかに対応は、バラバラだよね、その答えは、やはりその世俗性であり、例えば、高齢者の介護をしている我が家では、感染して重症化させるリスクを避けるために自粛するのが「現世利益」であると考えたけれども、若い人は、どちらかというと職を失ったり、給料が減る方が嫌だよね。

だから、当然のごとく、それぞれの立場で理論武装して、自分を納得させる、さらに、こういう本当に予測が難しい局面では、政府も多少の施策のまずさが出るのは致し方ないにしても「権力や権威を嫌う」国民はそれを許さないよね。

ただし、ずっと気になっていたのは、経済的にヤバイ、自殺者が増えると、躍起になって発言する人々がいるのが自分としては理解できなかったのだけれども、この本にはこういうことが書いてあった、

資本主義と言うのは、欲望と恐怖によって自己増殖するシステムだ。いまの生活水準から貧しくなることは、貧しいままの生活よりもはるかに大きな不幸を招き寄せ、家族が離散したり自殺したりする原因になる。いったん経済成長を始めると止まらなくなるのは、ひとびとがこの恐怖に駆られて競争するからだ。

私は、戦後生まれだけれども、小学生の頃はちょっと前のようにGNP(現在はGDP)2位の裕福な国ではなかった、だから、衣食住さえできれば良いところまで生活水準を下げれば、結構耐えられるのではないかと高を括っていた、しかし、資本主義にどっぷり漬かってしまったいわゆる現役世代には、それはとても耐えられないこと、耐えられない恐怖なんだね。

うん、この本はおよそ10年ほど前のものなんだけれども、いちいち、言っていることがうなずけてしまうんだよね。

あとがきに

おそらくこれからの10年以内に、私たちは大きな社会的・経済的な動乱を経験することになるだろう。それは「世界の終わり」ではないけれど、多くの日本人の人生を根底から変えてしまうような衝撃をもたらすにちがいない。

それが、今回のコロナ禍だとは言えないかもしれないけれども、大きな変化はあるだろうね、本来それは若い人を指向していくものだろうが、年寄りのやっかみも含めてどうもそれだけでは無いようにも思える。

しかし、本著者は希望を込めて締めくくる。

ここで最後に、もういちどだけ<夢>を語ってみたい。

戦後日本の繁栄を支えてきたシステムが崩壊しつくしたとき、残骸のなかから新しい世界が始まる。国家に依存しない経済的に自立した自由な個人だけが、その混乱のなかで、ユートピアへと達する道、すなわちエヴァンゲリオン(福音)を伝えることができるのだ。

本書の中で、アニメの「エヴァンゲリオン」に触れているところがあるので、それに引っかけたところもあるのだが、著者の意向を私なりに解釈すると、本来権威(政府)が嫌いな日本人が、コロナ禍の最中で、補助金が多いの少ないのと言っているうちは、旧システムへ回帰するだけに過ぎないのではないかと思うのだ、今でさえ財政赤字に苦しんでいるのに、自分に都合のいいところだけを政府に期待するのでは、新しい世界への道は開けないのではないか。

たしかに、日本人の食生活は変わり、外食がないと困る人もいるかもしれない、しかし、以前、このブログにも書いたように、外食も旅行も「不要不急」なものでしかないと思っている、そういうもので肥満した体が現在の現実の日本だと思うのだ。

それを変えられるかどうかが本当のポイントなのではなかろうか?

 

まぁ、私の意見はさておき、この本は、今読んでみると面白い本かもしれないね。