110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

唯臓論(後藤仁敏著)

 本書は1999年風人社刊行のものに加筆修正されて、2008年中公文庫版となったもの。

 唯脳論(養老猛司著)は有名で読まれた方も多いと思う、本書は題名としてはこれに対抗するようものだが、そのような対抗的な感じは無い。
 
 それよりも、人間や生物の身体、特に臓器・内臓についての進化や構造、役割などを優しく解説してくれる本である。
 人間も進化の過程で、生物的な中心・生きる中心としての身体を守る維持することから、だんだんと脳の働き・・・概念的なもの、抽象的なものへの移行、脱生物的なものへと変化しているように思う。
 しかし、本書を読むと、いかに脳に中心が移ろうとも、脳を含めたところの身体の維持が不可欠であることがわかる。
 そもそも、身体・・・臓器などは、病気をしたり、精神的に不安定になったりしたときなどに、ふと意識するようなものなのかもしれないが、その構造の複雑さや機能性についてはやはり見事としか言えないのだ。
 
 そういう面で言えば、著者の「唯臓論」という題名の付け方は、少し極端にすぎるという印象もあるが、本書を読んで、よくよく考えてみると、人間の本当の意味での土台であることがわかるのだ。

 現代社会は頭でっかちになっているように思う、その判ったつもりが、いろいろな問題を引き起こすのだろう。
 
 例えば、現代は(人為的な要素による)生物種の絶滅期であることなど。