110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

時間とは何か(伏見康冶・柳瀬睦男編)

 本書は1974年刊行の中央公論社自然選書」の中の一冊。

 時間論については、哲学や文学者が取り上げることが多いような気がするが、本書は大半が物理学の教授・助教授からなる、時間に関する短い論文(エッセーか)と、討論会の記録になっている。

 本書は、35年前の刊行なので、現在の物理学における時間の観念とは違うところがあるかもしれない。
 (タキオン粒子の話題が見受けられるなど、私の知っている範囲でも話題が古いと思うところもある)
 (これは、言い訳)私は、理数系に強くないので、細かい数式は眺めるしかないのだが、直感的に、どうやら「時間」そのものに、不思議な特性があるようだ。
 私的に認識できたのは、時間が何故一方向に進むのか(進んでいるように思えるだけかも知れないが)また、エントロピーベイトソンの著書で「何故机の上は放っておくとごたまぜになるの」という話があり、個人的に好きなのだが・・・そういう事だと思っている)が減少する方向に現象が起こるのか、そして、いわゆる映画などのフィルムを逆回しをしたように、もし、時間を逆方向に遡ることができても、元にもどらない可能性があること(非対称という言葉で言っているようだが)・・・などだ。
 最後の「非対称」なるものは、少し元気が出るかも話なのかもしれない、それは、私達が決定論(運命論)の世界に住んでいるのではないことを示していることだからだ。

 ただ、現実的には厳しいところもある・・・・しかし、慰めにはなる。

 本書は、哲学・文学的でない時間論であり面白く読めた、大森荘蔵氏の本を読んで比較するともっと面白いかもしれない。