110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

2008-01-01から1年間の記事一覧

ヴェニスの商人の資本論(岩井克人著)

本書は1985年筑摩書房から刊行された、現在はちくま学術文庫版で読むことができる。 少し前に氏の「貨幣論」を読んで、久しぶりに、経済関係の人でも面白い本を著す人がいることに気づき、古本屋ではよく見かける本書を読んでみる気になった。 経済学の範疇…

不可触民とカースト制度の歴史(小谷汪之著)

本書は明石書店1996年刊行のもの、また「リサイクル資料」である。 多分、図書館においてあれば読まないだろう本も、リサイクルとなると手が出てしまうのは、自分の変な欲なのだろうと思う、しかしながら、そういう時は、自分が普段興味を持っていないジャン…

異形の王権

本書は1986年平凡社から刊行された、現在は平凡社ライブラリーで読むことができる。 異形というと、他の人と一見して異なる風貌ということだ。 すなわち「非人」はそれが一目で判別できる格好(特長)をしていたわけだ。 最近、差別部落などの文献を読むこと…

2008年9月までの累計

2008年9月までの累計は、16,459,158歩で、41.1%の達成率になります。 まだ、前半は残暑が残っていましたが、意外に歩数が伸びて行きましたので良かったのですが、最後の週に雨が多くなり、歩数は伸び悩みました。 それでも、月間では72万歩ほど歩けたのでう…

貨幣論(岩井克人著)

本書は1993年筑摩書房刊行のもの、現在はちくま学芸文庫で読める。 そういえば、私は、経済学部出身なのですよ、30歳代は(見栄で)よくビジネス書などを読んでいました。 そんなことを思い出しながら、久しぶりに経済系の本を読むことになりました。 当初は…

アーロン収容所(会田雄二著)

本書は1973年初版の中公文庫版を読む。 前回の「私の中の日本軍(山本七平著)から、第二次世界大戦ものの読書が続いた形になった。 本書は名著と呼ばれているものなので、特に解説(今までもしてないが)は必要ないと思う。 こういう本を読むと、なんとなく…

私の中の日本軍(山本七平著)

本書は1975年文藝春秋社刊行のもの、私は、1983年第1刷の文春文庫版を読む。 山本氏の著作はいままでにも何回も取り上げてきた。 本書については、その題名から日本軍、軍隊論だと思っていた。 ところが、確かに、山本氏の実体験から生まれた、日本軍の分析…

第31回日本スリーデーマーチ

今年も、この季節が近づいてきました。 埼玉県東松山市(を起点)で開催される、日本スリーデーマーチ。 今年は、11月1日(土)~3日(月・祝日)です。 興味のある方は、以下のURLをご覧ください。 http://www.walking.or.jp/3day/index.htm ちなみに、私は…

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論(赤松啓介著)

本書は1994年明石書店刊行の「夜這いの民俗学」「夜這いの性愛論」を合本にしたもの、ちくま学芸文庫版で2004年刊行。 読んでみると分かるが、大変面白い。 しかし、現実にあった事実なのに、夢(物語、フィクション)を見ているような感覚に陥ることもある…

ひかりごけ(武田泰淳著)

本書は新潮文庫版で、表題作「ひかりごけ」の他に、「流人島にて」「異形の者」「海肌の匂い」の小編、4編が収められている。 何故、今頃、武田泰淳なのかは、先日前に読んだ、竹田青嗣氏の「現代批評の遠近法」の中で取り上げられており、興味を持ったから…

大杉栄評論集(飛鳥井雅道編)

本書は岩波文庫版。 大杉栄という人は、実際には余り知らなかった。 本書を読んでその片鱗が伺えた。 「法律と道徳」という小編がある。 以下、全編を見てみると・・・ 法律は人を呼んで国民という。道徳は人を指して臣下という。 法律が軽罪人を罰するのは、わ…

不思議の国のアリス(ルイス・キャロル著)

本書はちくま文庫版で、柳瀬尚紀氏の翻訳1987年初版。 童話としてのイメージがあるが、深読みすると、いろいろ考えるところのありそうな作品。 本書は、大人にも読めるようにという意図で翻訳されたとのこと。 いまは、かぜをひいて調子が悪い時なのだが、良…

ニーチェとその影(三島憲一著)

本書は1990年未来社刊行のものに、新たに論文を付加した形で、講談社学術文庫版(1997年)で読むことができる。 ちなみに、ニーチェを殆ど読んでいないので本書については語る資格は無いな。 (・・・終了) という分けにも行かないので、感じたことを書くと。 …

現代批評の遠近法(竹田青嗣著)

本書は1989年河出書房新社刊「夢の外部」を底本としたもの、1998年講談社学術文庫版。 竹田氏の著作は、哲学の入門書でお世話になっているが、本書は、文学、そして文学批判、政治といった話題に対する、氏の思考(批評)という形体をとっている。 第一部「Ⅰ…

嫌なこと

今日は雨の中ゴミ出していると、自宅のガレージに犬が××している。 飼い主が処理をしている。 じっと、その人の顔を見つめていると、最後に「すみません」と言った。 私は、ペットブームに否定的な意見だ。 この様な飼い主だけではないと思うが、典型的だ。 …

意味と無意味(Mメルロ=ポンティ著)

本書はみすず書房刊行のもの。 1945~1947年に発表された論文集。 共産党よりの政治論文については、しんどかったが(時代性が伺えてよいところもあるのだが)セザンヌに対する芸術論や、実存主義的な傾向の見える思想などは、興味を持って読むことができた…

知識人とは何か(EW.サイード著)

本書は1995年に平凡社から刊行されたもの、現在は平凡社ライブラリーで読める。 この著作は1993年にBBCが行っているリース講演を、サイードが表題のテーマに従って行った6回の講義録となっている。 知識人とはなんであろうか? そして、昨今、メディアに現れ…

(現代語訳)清沢満之語録(清沢満之著)

本書は2000年刊行の岩波現代文庫版。 本書は、実際に(違和感があるかも知れないが)、今村仁司氏が、擬古分体や英訳されたものを、読みやすく、日本語から日本語(現代語)へと翻訳してくれている。 宗教(哲学)の文章を見ると端的に分かるのだが、古い文献…

歴史的意識について(竹山道雄著)

本書は1983年、講談社学術文庫として刊行された(ちなみに栞が白紙で厚いのだ)。 本書を手にしたのは、著者が「ビルマの竪琴」の作者だったからで、文学者のエッセーの類だと思ったが、案に反してとても深い洞察の感じられる好著であった。 ちょうど、今月…

イデオロギーとしての技術と科学(ユルゲン・ハーバオマス著)

本書は平凡社ライブラリー2000年刊行のものを読んだ。 本書でのハーバーマスの立場は、科学技術は政治力を超えて影響力を持っていくという内容に受け取れるのだが、どうも解説を読んでみると、そう短絡的な立場ではないらしい。 しかし、1960年代の論文を集…

宮沢賢治(福島章著)

本書は金剛出版刊行の「パトグラフィ双書」の中の一冊だったもの、現在は講談社学術文庫版で読めると思う(手元のものは1985年第1刷の1991年第5刷のもの)。 そして、本書もリサイクル書籍だ。 本書の特筆すべきところは「パトグラフィ」という言葉で、これ…

デカルトの人間像(伊藤勝彦著)

本書は1970年勁草書房刊行のもの。 以前読んだ「浮遊する意味」という書物の中で、デカルトに関する論文があり、その解釈が新鮮だったので、デカルトという人の著作について興味を持った(そういえば、フッサールの「デカルト的省察」も眺めたことがあった・・…

寂しいこと

「淡海書房」という古本屋が店を閉める。 西武新宿線「新井薬師前」駅から数分のところにある。 ここは、個人的には誰にも教えたくなかった古本屋であった、随分と良い本を案外安く手に入れられた。 今から考えると、店じまいを考えていたので、損得抜きに安…

行為と意味(河上正秀著)

本書は1993年、「未知谷」刊行のもの。 副題に「技術時代の人間像」とあるように、現在(当時か?)の技術偏重な時代性に対する、実存主義的な批判を試みるという内容。 目次を眺めると、キルケゴール、ハイデッガー、メルロ=ポンティなどの言葉が目に付い…

ドビッシー音楽論集(ドビッシー著)

本書は1996年岩波文庫版、そして、リサイクル文庫。 最近、芸術家として仕事をしている人の見方が変わった、例えば、本作のドビッシーについても、ある作品を生み出すその力の源泉は何だろうかと考えてしまう。 確かに、音楽を作るための基礎的な素養、音感…

統合失調症の治療?

狂気、そして統合失調症(精神分裂症)は、思想的、比喩的に使われることが多い様な気がします。 もし、以下のように、脳の異常が原因で治せる病気になったとしたら・・・それらの思想におけるイメージが変わってしまうかもしれません。 現代の社会は分裂症的だ…

ハイデガーとの対話(柿原篤彌著)

本書は1991年尚学社から刊行された。 柿原氏が生前著述したハイデガーに関する論文をまとめて刊行されたもの。 本書の出版の目的は、プライベートな色合いが濃いので、私の手もとにきたのも、大変な幸運だったものと思う。 本作を読んで、今まで難解で苦しん…

人間とは何か(マーク・トウェイン著)

本書は1973年第1刷の岩波文庫版、私は1989年第23刷版を読む。 本書を読まれた方が多いということなので、もしかすると、コメントは不要かも知れない。 19世紀末から20世紀初頭に刊行された、トウェイン氏の晩年の著作で、表紙にもあるように「人間が環境に支…

祝祭性と狂気(渡辺哲夫著)

本書は岩波書店2007年刊行のもの。 渡辺氏の著作では「知覚の呪縛」が印象に残っている、その本のおかげで、精神病(狂気)ということについて考えるようになった。 本書では、精神病の最近のカテゴリーで分類できない症状について追求する。 それは、本来人…

被差別部落一千年史(高橋貞樹著)

本書は1924年に刊行されてすぐに発禁になったという戦前では幻の著作、現在は岩波文庫版で読むことができる(1992年が文庫版の初版で、私が入手したのは2003年の第20刷で本書が多くの人に読まれていることが伺える)。 作者の高橋貞樹氏は本書を19歳のときに…