110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

2008-01-01から1年間の記事一覧

ロボット・意識・心(武野純一著)

本書は日新出版2004年刊行のもの。 古本屋めぐりをしていると、たまに面白い本に出会う。 本書はそのうちのひとつで、ロボット工学の研究者である著者が、ロボットに意識や心というものが創れるかを比較的易しく解説してくれる。 当然、工学の他に、哲学・心…

場所(菅啓次郎・赤坂憲雄・高山宏・村田純一・雨宮民雄・今福龍太共著)

本書は、以前にも取り上げた「現代哲学の冒険」の七集目、1991年岩波書店刊行のもの。 ちなみに、本書はリサイクル書籍であった。 「場所」と言う題名から想像するイメージとはだいぶ異なった論文が多かった。 また、ポストモダンではないが、(従来の)「哲…

動物という文化(日高敏隆著)

本書は講談社学術文庫版1988年刊行のもの、本書には、講談社1973年刊行「人類文化史第一巻『人類創世記』に収められた「動物のパターン」と玉川選書1974年刊行「動物の生きる条件」という2編が収められている。 生物学の本はなかなか読む機会が無いが、本書…

エロスの涙(ジョルジュ・バタイユ著)

本書は2001年ちくま学術文庫版を読む。 バタイユの最後の作品、「私の書いたもののなかで最も良い本であると同時に最も親しみやすい本」と述べている様に、確かに読みやすかった。 しかし、バタイユの問題提起については、(依然)考えるべきところがあるよ…

実存と虚存(上田閑照著)

本書の底本は1992年弘文堂刊行の「場所-二重世界内存在」で、本書は、1999年ちくま学芸文庫版化に伴って加筆増補したもの。 本書は題名からも伺えるように、人間の存在を取り上げたものだが、存在そのものよりも、存在する場所を思考の中心としている。 副題…

異常心理の発見(クリフォード・アレン著)

本書は角川選書1983年版、底本は1952年刊行のもの。 精神医学の歴史を比較的易しく解説してくれる本、最終章に、訳者による補遺があり、現代との差異を補っている。 精神医学や心理学といったものも哲学や思想に影響を与えていると思う。 もとより、哲学的で…

パスカルにおける人間の研究(三木清著)

本書は1926年、岩波書店から初版刊行のもの、私は、改版後1975年版を読む。 岩波文庫版もあり、安価に読めるようだ。 全体的な感想としては、良い本だと思う。 パスカルの思想を通して、実存的な思想に導入されていくように感じた(ただし、パスカルから実存…

砂の女(安部公房著)

本書は1962年新潮社刊行、新潮社文庫版で読む。 確か、最近TVでも放映されたと思う、そのドラマは拝見していないので、どのような脚色をされたかは不明だ。 本書を読んでいると、1962年(昭和37年)という社会から、砂の世界への移行が伺える。 その当時は、…

昭和金融恐慌史(高橋亀吉・森垣淑著)

本書は1968年清明会新書として出版されたもの、現在は講談社学術文庫版で読める。 学術文庫版は、1993年に文庫版化しており、おりしもバブル崩壊後の時節に刊行された、そして、現在はそのバブルの最安値を更新してしまい、今後の展開が予測できない時点で読…

第31回日本スリーデーマーチ(の反省)

今年も、埼玉県東松山市で開催された第31回日本スリーデーマーチに参加しました。 (11月1日~11月3日) 昨年参加したときは、毎日の様に記事を更新したのですが、今年は少し異なります。 それは、自分の慢心から出たことなのです。 普段から、歩けなくなる…

2008年10月までの累計

2008年までの累計は、17,334,172歩で、4000万歩に対しては43.3%になりました。 例年、10月は気候も良くて、歩数が伸びます。 今年も87万歩程度歩くことができました。 しかし、さすがに日没も早くなり、だいぶ、涼しい~寒くなってきました。 これからは、寒…

箱男(安部公房著)

本書は新潮文庫版で読む。 最近、小説を読むようになった、どちらかというと戦前生まれの著作者が多い。 本書の書名については前か知っていたが、実際に読むのは始めてである。 イメージとしては、いわゆる、心身二元論のようなものを考えていた。 箱は新し…

「待つ」ということ(鷲田清一著)

本書は角川選書2006年刊行のもの。 鷲田氏は一時期「モード」系に行ったので、少し敬遠気味だったが、本書の冒頭で、携帯電話の普及で「待つ」ということができない社会になった・・・という趣旨の文言が気になって読み始めた。 「待てる」社会というのはどのよ…

自画像としての都市(井尻千男著)

本書は東洋経済新報社1994年刊行のもの。 日本の都市の景観が汚いのは何故かということを考察した書籍。 時代的には、バブルが崩壊して日本が低迷している時のもの、それと同時に、アメリカも低迷た時期のようで、その相関が面白い。 相関の、何が面白いのか…

時間の園丁(武満徹著)

本書は1996年新潮社刊行のもの。 武満氏の最後のテクストが収められている。 本書は、奇しくも押入れの中から出てきた、以前、読了したのかは定かではない。 例えば、思想・哲学ならば、自分の論理を、証明しなければならない、そこには、精緻な表現や比喩な…

経済学入門(都留重人著)

本書は1976年刊行のもの、現在も入手できるかは不明だが古本屋を探せばあるだろう。 最近、経済学の本を読むことが増えた(それは経営学ではないのだ)。 先般も、最近の経済学の本を読んで、少し失望したが、本書は、当初まったく期待していなかったのだが…

文化と両義性(山口昌男著)

本書は岩波書店1975年刊行のもの、現在は岩波現代文庫版で読める。 文化というものは人間の創り出したもので、そこには、両義性が存在する、という問題意識からはじまる。 それは、言葉の持つ多義性であったり、自然の無限性に対する、人間の有限性であった…

毎日の言葉(柳田国男著)

本書は新潮文庫版で読む。 日本語は難しい、本書は昭和21年(1946)に刊行されたもの、終戦直後によくもまあ出版できたものだと感嘆してしまう。 主題の「毎日の言葉」には、日本語をいくつか取り上げて、その意味や成立などの解説とコメントをしていくとい…

増補 経済学という教養(稲葉振一郎著)

本書は東洋経済新報社から2004年に刊行された「経済学という教養」に加筆、論文を追加したものをちくま文庫版として2008年に刊行したもの。 最近、経済学系の本をよく読むようになった。 本書の最初の方に書いてある「素人の、素人による、素人のための経済…

人間(E.カッシーラー著)

本書は岩波書店1953年刊行後、改版されたもの、現在は岩波文庫版で読めると思う。 本書もリサイクル資料(書籍)だ。 まず、カッシーラーをここで取り上げられることは嬉しい、氏の代表作「シンボル形式の哲学」は、実は、手持ち在庫なのだが、その膨大な量…

面白い動画

YAHOO動画に「イヴの時間」というアニメが始まりました。 人間とアンドロイド(人造人間→非人間)という2つの「種」が存在し、なおかつ、アンドロイドも意識(自我)があったとしたら・・・・? まぁ、設定が面白いと言う人も多いでしょうが、実は、これ逆説的に…

蝮のすえ・「愛」のかたち(武田泰淳著)

本書は講談社文芸文庫版。 本書には、表題作のほか「才子佳人」の3編が収められている。 何故、題名『「愛」のかたち』の「愛」には「」が付いているのだろう? 本作の3編は、様々なかたちの愛が綴られている。 その愛は、ある意味理想化された愛であるのだ…

資本主義を語る(岩井克人著)

本書は1994年講談社刊行、現在はちくま学芸文庫版で読める。 ここのところ、昔、習った「経済学」に関する本を読むようになってきた。 と言っても、教科書ではなく、多分に、思想・哲学的なものが多い。 そして、何故か、岩井氏の著作は、最近、立て続けに3…

偶然性の精神病理(木村敏著)

本書は1994年岩波書店刊行、現在は岩波現代文庫で読める。 精神病理という題名だがあとがきにもあるように哲学的な思考が強い本。 象徴的なところではニーチェの「真理とはそれがなければある種の生物が生きられないような誤謬のことである。生きることにと…

市場の秩序学(塩沢由典著)

本書は1990年筑摩書房刊行、私はこれをちくま学芸文庫版(1998年)で読む。 最近、経済に再び関心が出てきた、しかし、当然のことながら、数学は苦手なので数式の多い近代経済学系のものは遠慮したいところ。 しかしながら、本書は、その近代経済学(新古典…

司馬遷(武田泰淳著)

本書は、史記の世界と副題の付いた、武田氏の著作、1943年に日本評論社から刊行されたもの、現在は講談社文芸文庫で読める。 史記については、武田氏の著述から興味を持つようになった、いきなり変なことを書くが、現在の混沌とした日本の現状について、そし…

サルの正義(呉智英著)

本書は1993年双葉社刊行、現在は双葉文庫で読める(と思う) 本書は、独言悟浄さん(お気にいりブログ見てね)に、教えてもらった。 この本の中には、独言悟浄さんに指摘していただいた「死刑を廃止し、仇討ちを復活せよ」が含まれている。 本書は、とても麗…

√2の不思議(足立恒雄著)

本書は1994年光文社から刊行のもの、現在は加筆訂正を加えられてちくま学術文庫版で読むことができる。 久しぶりに、横書きの本を読んだ。 本書は、数学の優位性などを説いているように思う。 そして、歴史的な見地からの、哲学との差別化というようなところ…

野火(大岡昇平著)

本書は新潮文庫版で読む。 武田泰淳氏の「ひかりごけ」をamazonで検索すると、何故か大岡氏の「野火」がペアで出てくる。 何故かと思うと、双方とも、カニバリズムについての記述があるからである。 しかしながら、双方の(小説の)場面設定は微妙に異なる。…

哲学に何ができるか(五木寛之・廣松渉著)

本書は『哲学に何ができるか(現代哲学講義)』として、朝日出版社から1978年に刊行されたもの、私は、1996年の中公文庫版で読んだ。 まずは、このような組み合わせの対談が実現していた事に驚いた。 そして、内容については、さすがに古さを感じさせるもの…