110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

2013-01-01から1年間の記事一覧

介護する人、される人

最近親の生活支援をしていて思うのだが、歳をとって老人になり体が不自由になってきたから自動的に支援や介護されて当然だという考え方を、被介護者(すなわちお年より)が持っているとしたら、それは大きな間違いだと思う。 支援者の目で見ると、自分勝手な…

断章119、120

断章119、「自然は互いに模倣する。自然は互いに模倣する。よい土地にまかれた種は、実を結ぶ。よい精神にまかれた原理は、実を結ぶ。」ここまではよいのだがこの後突然「それぞれの本性がこうも異なるのに、数は空間を模倣する。すべては同一の主によってな…

ちいさこべ(山本周五郎著)

本書は新潮文庫版で読む。 ある書店でマンガの中にこの題名があったので取り上げてみるとやはり原作は山本周五郎であった。 買おうかとも思ったがまずは文章から入ろうと思いその時は買わなかった。 実際読んでみると小編ではありながら感動的な作品であった…

断章116~118

断章116 「職業。思想。すべては一つであり、すべては多様である。人間の本性といっても、そのなかにはいかに多くの本性があることだろう。いかに多くの天職があることだろう。そして人は、普通、どんな偶然から、ある職業がほめられるのを聞いてそれを選ぶ…

断章114、115

断章114は「多様性というものは」とはじまる、そして「声の調子」「歩きぶり」「咳のしかた」「はなのかみかた」「くしゃみのしかた」と例示していく。それに続けて「人は、果物のなかから葡萄を見分ける。そしてあらゆる葡萄のなかからマスカットを、ついで…

断章109~113

断章109は「健康のときには、もし病気になったらどういうふうにやっていけるのだろうと怪しむ」ところが「病気になったらなったで、喜んで薬をのむ」それは「病気がそうさせるのだ」そのときに「人はもう、健康があたえていたもろもろの情念や、気ばらしとか…

断章105~108

断章105は、「あることについて人の判断を求めるときに、その説明の仕方でその人の判断を雲らさないようにするのは、なんと難しいことだろう」と始まる、人が何かを話すときに意識的にも無意識的にも自身の評価を加えていることがある、だから「私は、これを…

断章103、104

「アレクサンドロスの貞潔の模範は・・・」で始まる本断章103は、偉人といえどもその能力(?)が我々よりも高いのは認めてもその本質は凡夫とあまり変わらないところもあるのだと説く、「彼らの丈(たけ)が我々より高いのは、彼らの頭がわれわれより高いと…

チャールズ・ラム傳(福原麟太郎著)

本書は昭和38年垂水書房刊行のものを読む。 本書はある古書店の店外の棚にあった、そこは100円本なども並ぶ棚で、手にしてみると面白そうな内容に見える、値段はよく見えなかったのだが、300円も払えば私のものだと思い「これいくら?」と聞くと・・・店主も…

即興詩人(アンデルセン著)

本書は山川出版社刊行の口語訳版で読む。 もとより原書で読む能力がないので翻訳されたものを読むのだが、本書の翻訳で有名なのは森鴎外の手によるもので母親のために大きな活字で印刷されたという心温まる話もあるようで、その文語文の世界は口語訳を成した…

河鍋曉斎戯画集

本書は岩波文庫版で見る(読む?)。 河鍋曉斎と出会ったのは「地獄少女(アニメ)」のオープニングでの地獄絵なので、池袋の古本市で本書を目にしたときには既に手にしていた、本の状態や価格は決してお手頃とは言えなかったのだが。 さて、読んで(見て)…

哲学の課題(樫山欽四郎著)

本書は講談社学術文庫版で読む。 著者による哲学論集10編である、1955年から1976年とそれぞれの著された時期は異なるのだが不思議と文章のイメージに違和感が少ない、それは、読み手にわかりやすく伝えるという著者の姿勢なのだろうと憶測する。 ポストモダ…

カレワラ(森本覚丹訳)

本書は講談社学術文庫版で読む「カレワラ」とはフィンランドに伝わる叙事詩であり、本書のオリジナルは昭和12年に「カレワラ」出版後100年を記念してフィンランド政府の出版費用助成で成った超豪華版であったのだ、それがこうして普及版として読むことができ…

繁栄と衰退と(岡崎久彦著)

本書は1991年文芸春秋社から刊行されたもの、私は1999年の文春文庫版で読む。 副題に「オランダ史に日本が見える」とある。 最近、日本の国力の減速や衰退(発刊当時はそうではなかったが)が目につくが、これに対して歴史を参考にしようとい考えることはそ…

これからの「正義」の話をしよう(マイケル・サンデル著)

本書は早川書房刊行のもの、奥付を見ると2010年刊行であり随分前に流行ったことがわかる、私としては意外な感覚を覚えたのだが、現代感覚について鈍いということなのだろう(だから、平然と古書を読んでいられるのだろうが・・・)。 邦題は長ったらしいが原…

可愛い女・犬を連れた奥さん・他一篇(チェーホフ著)

タイトルからわかるように本書は岩波文庫版で読む。 晩年の沈潜期にさしかかろうとする時期のチェーホフ作品ということでなかなか味わい深い短篇が三篇収録されている。 「可愛い女」=オーレンカが不幸になっていくのを最初は他人の目で読んみながら、最後…

玉くしげ(本居宣長著)

本書は多摩通信社2007年刊行のもの現代語訳で新書版だ、副題が「美しい国のための提言」とあることから失敗に終わった前安倍政権に呼応して出版を企画したと思う。 でも、本書のような本を良く出されたものだと思う。 本書はナショナリズムの本だ、そして、…

虚無よりの創造(シェストフ著)

本書は芝書店昭和9年(1934年)刊行のもの。 用紙は黄ばんでいるし、ページが外れていたり、全体に痛みもあるが本書は読むことができる。 そして、本書の様な文学論ならば今もって読むことができる。 なおのこと、これから書籍の電子化が進むのならば、ささ…

ポストモダン保守主義(広岡守穂著)

本書は1988年有信堂刊行のもの、日本の絶頂期(かな?)に著されたもの。 何故日本はここまで成長できたのか、それは本書で「後期産業社会」という概念で示され、その大きな要因とされる「組織化」と「市場化」(一見矛盾する概念である)が当時の日本で良く…

雪舟

本書は新潮社刊行の新潮日本芸術文庫の中の一冊、薄い本なのでのんびり読む(見る!)ことができる。 雪舟というと水墨画のイメージを持っていたが、人物像や仏教画などもあることに少し驚いた。 当然、自分の好きな画題を書くことで食ってはいけないわけで…

芸人 その世界(永六輔著)

本書は文藝春秋社1969年刊行のもの、私は岩波現代文庫(2005年初版)のもので読む。 本書は、著述と言えるかどうかはあやしい、それは芸人と呼ばれた人たちの言葉を集めたものだからだ。 そして、特に戦前の芸人と呼ばれた人々の生き方は、私の想像をはるか…

艸木虫魚(薄田泣菫著)

本書は岩波文庫版で読む、この著者の作品は青空文庫でもいくらか読めるので一読されても良かろう。 (本作「艸木虫魚」もある) 本書を読んで、良い文章に出会えた、こんな風にも日本語は使えるのだ。 だから早速「茶話」を探し始めた。

「世界制服」は可能か?(岡田斗司夫著)

本書は筑摩プリマー新書2007年刊行のもの。 世界制服などという言葉が身近にあるのは私の世代だろうと思ったら著者は1958年生であった。 レインボーマンまで出てくればこれは固い、私は「死ね死ね団」よりも「提婆達多」の魂を宿したレインボーマンという凄…

現象学の理念(フッサール著)

本書は作品社刊行のもの、長谷川宏訳なので手にする。 本書はフッサールの初期の作品であり5つの講義内容が収録されている、言葉としての「現象学」は知っていたが、現象学とは何かについては本書を読んで多少なりとも認識できたと思う。 竹田青嗣が以前現…

abさんご(黒田夏子著)

本書は文藝春秋社刊行のもの、流行りにのった形だが、一見ひらがなが多く易しそうな文体はそうが問屋が卸さない、難度の高い一品、どちらかというと50年前の作品のほうが私にはわかりやすい。 でも、この本を沢山の人が読むことだけでも多少(文学界)の救い…

谷川俊太郎・・・

の詩集に少しハマっている、手元に集英社文庫版で3冊ほど集まったので気楽に読んでいる。 何のことはない、この著者はみんな知っているらしい、だから少しもマイナーではない。 谷川徹三という哲学者が父親だということを知っていようがいまいが、やはり有名…

私たちはいかに「蟹工船」を読んだか

本書は白樺文学館多喜二ライブラリー2008年発行のもの、「蟹工船」読者エッセーコンテストの入選作を集めたもの、ちとおもしろそうなので読んでみる。 さすがに長編のエッセーは難しいのか、論理が破綻しているものが多い、プロレタリア革命を起こせばいいの…

鏡の中の物理学(朝永振一郎著)

本書は講談社学術文庫版で読む。 たまたま、本の海をかき分けていたら出てきた、小冊なので気軽に読む。 (小冊なので他の本に押し潰されて折れ曲がったりする危険性もある・・・どういう部屋だ?) 素粒子の世界での対称性についての解説した表題作の他に、…

Macが復活

先日、Macを起動しようと思ったら電源ケーブルのランプが点灯していないのに気づいた。 充電できないと先々困るのでACアダプターを修理に出したところ、本日返却されてきた・ 久しぶりにMacを使う、やはり画面が大きくて奇麗だわ。

柳橋物語・むかしも今も(山本周五郎著)

本書は新潮文庫版で読む。 本を読んでいて泣くことは今までなかったのだが本書では泣いてしまった。 そして、創作に入った著者は人間嫌いでそんなに実際の人間に降れているわけではないのに、何故このような作品が書けるのだろうか。 それは、修行時代の蓄積…